アンガーマネジメントとは
アンガーマネジメントは、1970年代のアメリカで、怒りの感情を適切に管理する方法を学ぶ教育プログラムとして開発されました。当初は主にドメスティックバイオレンス(DV)や人種差別、性差別、軽犯罪者などを対象にした矯正プログラムとして広まりました。
現在では、アメリカの教育機関や企業にも導入され、特に教育現場では、生徒やその親との関係を築くために、またビジネスの現場では職場環境の改善や業務パフォーマンスの向上、部下とのコミュニケーションの円滑化などを目的として活用されています。
アンガーマネジメントが特に注目されたきっかけの一つは、2001年9月11日にアメリカで発生した同時多発テロ事件です。この悲劇的な出来事は、怒りと不安が密接に関連していることを明らかにし、その後、アメリカでは犯罪者に対して「アンガーマネジメント講習を受けること」が司法取引の条件として提案されるケースが増えました。
元々は矯正目的で開発されたアンガーマネジメントですが、半世紀を超える時を経て、その効果が広く認識されるようになりました。今では、職場でのコミュニケーションの改善やストレス管理、生産性向上のために活用されるようになり、パワハラ防止や組織風土の改革、企業研修の一環としても取り入れられることが一般的となっています。
怒りのメカニズムとは
怒りのメカニズムを理解するうえで重要となるのが、「第一次感情」と「第二次感情」の区別です。
第一次感情とは、ネガティブな気持ちになったときに生じる以下のような感情を指します。
- 悲しみ(例: 失望、喪失)
- 恐れ(例: 危険、不安)
- 怒り(例: フラストレーション、敵意)
- 驚き(例: 予期しない出来事に対する反応)
- 嫌悪(例: 不快、嫌なものを避けたいという感情)
例えば、職場で上司に叱責されたり、重大なミスを犯したり、部下の行動に納得できない時など、これらの場面で一次感情が湧き上がるのはごく自然な反応です。
そして、繰り返し叱られたり、失敗を重ねたりすることでストレスが蓄積されると、心の許容量を超えて「コップから水が溢れる」ように、感情が爆発してしまうことがあります。許容範囲を超えた時に現れるのが、二次感情としての「怒り」です。つまり、怒りは一次感情に積み重なったフラストレーションやストレス、未解決の欲求が溜まっていくことで生じる防衛反応だと言えます。
私たちは、何かが何故起こっているのか、その仕組みが分からないと、感情をコントロールするのが難しくなります。しかし、怒りが一次感情と二次感情から成り立っているというメカニズムを理解することができれば、怒りにうまく対処する方法を実践することが容易になります。
怒りという感情の背後には、第一次感情が潜んでいます。どのような出来事が引き金となって怒りが生じているのかを探し、第一次感情を適切に処理することで、怒りを解消する方法が見えてくることがあります。
このように怒りのメカニズムを理解することによって、感情的な問題やそれに伴うトラブルを減らし、冷静に対処することができるようになります。
アンガーマネジメントの効果
アンガーマネジメントはただの怒りの管理にとどまらず、仕事や家庭、社会での適応力を高め、より豊かな人間関係を築くための有効なスキルとなります。
コミュニケーションが良好になる
アンガーマネジメントを実践すると、感情が高ぶったときでも冷静に自分の思いや意見を伝えることができるようになります。怒りをコントロールすることで、無駄な対立を避け、相手の意見に耳を傾ける余裕が生まれます。このように、冷静で建設的な対話が可能になるため、コミュニケーションの質が向上し、誤解や衝突が減少します。結果として、相手との関係性が円滑になり、意思伝達がよりスムーズに行えるようになります。
育児、教育、指導に役立てられる
アンガーマネジメントは、育児や教育、指導の場でも非常に有益です。子どもや部下の行動に対して、怒りに任せて反応するのではなく、冷静に状況を判断し、適切な対応を取ることができます。特に育児においては、親が感情的にならず、落ち着いて子どもの言動に対応することで、子どもにとっても安心感が生まれ、情緒的な安定をもたらします。また、教育や指導の場では、感情をうまくコントロールしながらフィードバックを行うことで、相手の成長を促進し、信頼関係を築くことができます。
自分の視野が拡がる
怒りを適切に管理できるようになると、自分の感情や反応を客観的に見ることができ、冷静に状況を判断できるようになります。その結果、感情に流されずに、より広い視野で物事を考えることができるようになります。感情に基づいた偏った判断から解放され、他者の立場や背景を理解しやすくなります。このように、視野が拡がることで、人間関係においても柔軟性が生まれ、より良い決断を下す力が養われます。
アンガーマネジメントに向いている人
職場でのストレスが原因で頻繁に怒りを感じる上司や部下
管理職やリーダーシップポジションにいる人で、部下や同僚からの対応にイライラしやすい人。仕事のプレッシャーや部下の行動に対して怒りを感じ、感情的に反応してしまうことが多い人。
・家庭で子育てに苦しむ親
子育て中の親が、子どもの反抗期やわがままな行動、生活の不規則さに対して怒りを感じ、感情的に反応しがち。
子どもがルールを守らなかったり、繰り返し同じことを注意しても改善されない場合に、感情的に怒ってしまうなど
対人関係でイライラしやすい人
家族や友人との関係でしばしば不満を抱き、それが怒りに変わってしまう人。
感情をうまくコントロールできず、冷静に伝えることができない。
親しい友人からの無意識な言動に怒りを感じてしまい、言い過ぎて関係がぎくしゃくしてしまうことが多い人。
感情のコントロールが効かない人
怒りやイライラが自分の生活や健康に悪影響を及ぼしていると感じている人。
長期的に感情を抑えることができず、自己改善を望んでいる人。
フラストレーションを感じやすい人
細かいことにフラストレーションを感じやすく、それが怒りに繋がってしまう人。
自分の期待通りに物事が進まないと、すぐに不満を抱き、怒りを感じてしまう。
予定通りに物事が進まないとイライラし、すぐに怒りの感情が湧いてしまう人。
過去の怒りを引きずる人
過去の出来事や人間関係のトラウマから怒りが収まらず、現在の状況でもその感情が影響してしまう人。
過去の不満や怒りを解消できていない人
昔の職場での経験や家庭での出来事を未だに引きずっており、それが今でも怒りとして現れる人。